家らしい家
2017年9月20日「水曜日」更新の日記
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- 私は私に固有な私だけの家を欲しているのだろうかという疑いを根深く持っている。つまり、自分は自分だけの家を持ちたい気持があるのだろうかということだ。 どうもこれが極めて怪しい。並大抵の怪しさではない。ごくごく当り前な畳にゴロリと寝ころんで、これもまた当り前な天井を眺めながら一向に苦にならないのだ。この床も天井も、窓だって、照明器具なんか、私の依頼者達が住み暮している私が設計したモノと比べればイヤになる程に平凡極まるモノ達なのだ。それが一向に苦にならない。これはどういう事なのだろうか。自分は自分の家なんて全然欲しくも何ともない。 それが本当なところではないのか。実のところ平凡な家や平凡な部屋であればある程に、それが他人の家や部屋であっても快適に過せる習性がある。つまり自分には場所を私有したい、私物化したいという欲望が稀薄なようなのだ。これは別に格好の良い観念から産み出されてくる考えの類ではない。もっとだらしなくデレついた、何と言ったら良いのか、 体にしみついてしまったこれもまた趣味みたいなモノなのだ。「家なんてそんなに大事なモノじゃない。もしかしたら要らないモノだ」そんな考えが時々、体を吹き抜けてゆく。何も無いのが一番さ。という考えは何も家の感じや、部屋の模様に関しての実感からくるばかりのものではない。シルクロードの砂漠やチべットの高原を旅していて、ふとそんな想いにとらわれることがあった。が、そんなに大ゲサで思わせ振りなものだけでもない。家に関する暗い諦観では決してない。むしろ明るく、例えば家らしい家を持たずに如何に心地良い都市生活を送るかということに思いを巡らせることだろう。住生活ではない。 ましてやリビングなぞでは決してない。あんな不自由なものは嫌だ。 もう、家を持つ、自分の部屋を持つなんてこだわりを捨ててしまって、都市に住む、都市を使うという工夫をした方がよほど健全なのではなかろうかと考えるのだ。ウィリアム・モリス主義者であった小野二郎はそんな感じを、住宅を街路化してしまえという風に言った。
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