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後見役の人に勝手に店を売られてしまったが

2019年5月15日「水曜日」更新の日記

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私は小料理屋を営んでいます。店が不振なので営業をひとまずやめようと決心し、知入の甲に「よい買手があったら心掛けておいてください」と口頭で依頼しました。その後商売で知合いの乙が土地、家屋、営業権等一切を買ってくれるというので話を進めようとしたところ、たいへんなことを発見しました。実は甲には、前々から私の後見役として営業以外の事務処理一を委せ、印鑑や権利証を預けておいたのですが、それを悪用して、知らない間に店を見ず知らずの丙に売り渡してしまっていたことがわかったのです。どうしたらよいでしょうか。第三者に実印・印鑑証明書、権利証を預けた場合、この第三者が勝手に本人の代理入だと自称し、他人の不動産を処分したとき、この第三者の勝手な行為の結果はどうなるかということです。判例には、実印と権利証を預けた以上、代理権限を与えたものだとして、この第三者が行った不動産処分行為を有効なものと是認する趣旨のものもあります(実印所持について最高裁・昭三五。一〇・一八判決)。また、ある事項についての代理権が消滅しているのに、その後、その旧代理権の範囲を超えて(たとえば、借金の代理権だけなのに、土地家屋の売買の代理権があるものとして)、ある法律行為を行った場合、その行為についても本人(つまり、はじめに借金を依頼した当人)が、その責めを負うべきであるとしたものがあります(最高裁・昭三一・一一・二九判決)。したがって、もしつぎのような場合であれば、あなたは正式に売手となって、丙に対し、店舗の土地・建物の所有権譲渡を行う責任を果たさねばならなくなります。あなたが今までに何回か甲を代理人として借金や物の譲渡などの取引行為を行ったことがあり、それを丙が知っていたこと、あるいは知っていなくとも、丙が甲をあなたの代理人であると信ずるのも道理であるという事情があること。甲丙間の話合いに当たって、甲があなたから委任を受けてやっているのだということを丙に話し、または印鑑やぼ利証を示してこれを信じさせ、また丙の側からみて、甲があなたの代理人であると信ずるのが当然であるという事情があること。しかし、あなたが真に甲に、店や土地を売ることを頼んだのでなければ、丙からの譲渡(登記)の請求に応ずる必要はありません。また、登記してしまった後であればその登記抹消の請求ができます。もちろん丙が、甲に代理権がないことを知っていたり、当然注意すれば知りえたのに、この注意を怠ったときも代理の効力はありません。しかし、お話のような事情では、甲を無権代理人とすることは困難なように思われます。要するに、印鑑や権利証をめったに他人に預けるものではありません。また、いったん預けても用事が済んだらすぐ返してもらうことを心してください。

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