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新しい借地借家法の期限付賃貸借とはどんなことか

2019年6月11日「火曜日」更新の日記

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転勤等で一時的に家を貸した場合貸主が戻ってきても容易に明渡してもらえないという悩みがありますが、新しい借地借家法では、期限付建物賃貸借制度ができたとのことですが、説明してください。持家のあるサラリーマン等が転勤する場合、空家になる持家を他人に貸すことがあります。この場合、そのサラリーマンが戻ってくるときは、異議なく明け渡すということを特約するのが通常です。しかし、現実には、賃借人はなかなか明渡しをしてくれません。このような場合の法律問題は、サラリーマンの転勤中の賃貸借は、借地借家法の保護を受けない一時使用を目的とした賃貸借かどうかです。一時使用だと認められなければ、明渡しの要求が、いわゆる正当事由にもとづくものか否かが争点ですが、これも貸主側に絶対に有利なわけではありません。新法は、この問題を解決したものです。借地借家法三八条は、賃貸人の不在期間の建物賃貸借について定めています。「一定の期間を確定して」建物の賃貸借の期間とする場合に限って、契約の更新がないこととする旨の契約を定めることを可能にしました。この特約は、「転勤等のやむを得ない事情」を記載した書面によるとされています。期限付建物賃貸借は、ほかに、取壊し予定の建物の賃貸借についても考えられています。これは、法令または契約によって一定の期間を経過した後に建物を取り壊すことが明らかな場合での賃貸借にあっては、建物を取り壊す時期に賃貸借も終了する旨を定めることができるとしています(同法三九条)。以上に述べた期限付建物賃貸借の規定は、一時使用契約をしたことが明らかな場合には適用されません(同法四〇条)。たとえば、イベントのために、一時的に一定の土地を貸す場合等は、明らかに一時使用を目的とした建物の賃貸借で、期限付建物賃貸借の規定は適用されないのです。この新制度が借家関係に導入されると、転勤族は、その間安心して建物を貸すことができ、建物利用という社会的効用の点からも意味がでてきます。賃貸入の不在期間の建物賃貸借も取壊し予定の建物の賃貸借も、特約は、前者にあっては、転勤等やむを得ない事情によることが、後者にあっては、建物を取り壊す必要のある事由を書面に記載することが要件になります。これは、口頭の特約の場合にあっては、後に賃貸人と賃借人間の争いの種となるので、特約を結んだ事情を後々のために明確にした規定といえます。もし、書面での特約をしなかった場合には、本規定の適用を受けることができません。この場合には、転勤から戻った賃貸人は、一時使用を目的とした賃貸借で借地借家法の適用がないと主張するか、賃貸人の明渡請求には、正当の事由があると主張、現行の訴訟で解決することになります。

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