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和解についての裁判例

2019年6月24日「月曜日」更新の日記

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最高裁・昭和五一年一二月一七日判決の事案は、地方裁判所で成立した和解に関するものです。その和解は、家賃の八か月分を滞納した借家人に対して、家主が明渡しを求めて争っていた事件で成立したものです。家主が「もう一度だけかんべんしてやろう」という親心で、再度賃貸する代わり「一回でも滞納したときは催促も通告もなく当然解除」という条項を入れました。このような厳しい条項は、裁判所が関与する和解はもとより、公正証書の契約にも入れないのが普通ですが、地裁の裁判上の和解でこの条項が入れられたのは、その和解が成立した訴訟では借家人敗訴が明らかだったからでしその結果、借家人は和解後の家賃はきちんと払っていたつもりだったのですが、たまたま途中の一か月分を支払いずみと勘ちがいして、滞納してしまったのです。これに対する最高裁の判決はつぎのとおりです。訴訟上の和解については、原則として和解調書に書かれた文言どおりに解釈すべきだ。しかしこの和解成立までのいきさつ、つまり借家人の前科を考慮に入れても、借家人の勘ちがいによるその一回分の滞納は、「解除通知なくして契約が当然解除されたものとして扱うのが妥当だ」といえるほど互いに信頼関係を破壊したものではない。だから、本件は、和解条項どおりに契約の当然解除を認めることが合理的とはいえない「特別の事情」つまり例外的事情がある場合に当たる。として家主の主張を退けました。ご質問の事例と判決の事例と比べると、「一回分」では同じですが、ご質間の事例では「催告」も「解除通知」も必要です。その催告(兼解除通知)は内容証明郵便で届けられるのが普通ですから、心配は無用でしょう。なお、ご質問の事例のように、何らかの手ちがいが生じた場合でも、裁判で救われる道は十分にありますから、あきらめずに弁護士に相談してみることです。

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