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退職したときに明け渡させる特約の結び方は

2019年6月29日「土曜日」更新の日記

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工場を経営しておりますが、最近、付近のアパートを買収し改装したので、工員の住居にしようと思っております。ただ、工員が工場をやめるときはすぐ出て行ってもらわないと困リます。退職したら明け渡すという特約は効力がありますか。事業を営んでいて、従業員に自宅の一部や、あるいは会社の家を貸す場合に一番問題なのは、退職するとき明け渡してもらう特約は有効かということです。結論を先にいいますと、このような特約はある場合は無効である、ということがいえると思います。つぎに場合を分けて考えてみましょう。①家賃を取らない場合。会社や事業主が、従業員の能率増進および厚生の一助として従業員にのみ貸している家で、無料であるか、あるいは若干の金銭を払わせる場合でも、わずかであって修繕費の一部にしか当たらぬ程度である場合は、使用貸借(民法五九三条以下参照)であって、借地借家法の適用がないものというべきで、退職のときに明け渡すという特約は有効です。②家賃を取る場合。この場合は複雑で、さらに分けて考えねばなりません。㋑会社や事業主が従業員と対等の立場で、通常の賃貸借契約として貸した場合には、一般の例に漏れず、退職のとき明け渡す、という特約は無効です。たとえ、特約があっても、明渡しを求める正当事由の有無を判断する一基準となるにすぎません。なお、この場合、通常の賃貸借契約であるか否かを判定するのに賃料が一般に比して安いか高いかが問題となります。㋺家賃は取るが、一般に比して相当安く、かつ従業員の従業に便ならしめるために与えられた住居で、結局は会社その他の事業経営の一環としてしか考えられないような場合は、借地借家法の適用がなく、退職のときに明け渡すという特約は原則として有効です。ですからあなたとしては、家賃を取らないか、一般の場合より相当安く貸そうというのでしたら、退職のとき明け渡すという特約を有効に結ぶことができます。

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