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退職したときに明け渡させる特約の結び方は②

2019年6月30日「日曜日」更新の日記

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買収したアパートが、工場の付近であるということも有利な条件です。そうでなく、ふつう一般の賃貸借契約と同じように、市価で貸すのであれば、おそらくどんな事情を並べても借地借家法の適用を受けることになりましょうから、退職時に明け渡してもらう特約は効力がなく、「正当な事由」の存在を立証しないかぎり明け渡してもらえなくなります。以上のことをまとめてみますと、社宅は、もともと従業員に対する福利、厚生施設として、さらに会社の事務の能率増進の一助として、会社が従業員に提供するものであり、社宅を利用できない従業員との間に公平な取扱いを期する意味で、社宅の維持費を使用料名義で、若干、その従業員から徴収するというのが、本来の意味の社宅使用関係です。このようなかたちで従業員に社宅を使用させるなら、すでに最高裁判所の判例が示しているように「社宅を使用できるのは、従業員たる身分を保有する期間に限られる趣旨の特殊の契約関係であって、賃貸借関係ではない」(昭和二九・一一・一六判決)こととなり、従業員が退職して、その地位を失えば当然。社宅を明け渡さなければならない義務が発生します。したがって、「退職と同時に社宅を明け渡すこと」という特約は、有効な取決めとして活用できます。これに反して、社宅の使用料が、家賃や部屋代に相当するような、つまり社宅使用の対価とみられるようなものであれば、借地借家法が適用される結果、特約は、裁判に持ち出した場合に無効と判定されます。

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