HEYA JAM

トップ > 元年12月> 19日

借家人は敷金を賃料に充当するよう要求できるか

2019年12月19日「木曜日」更新の日記

2019-12-19の日記のIMAGE
店舗を貸している家主です。借家人が三カ月も賃料を滞納しています。契約書には〃無催告解除″の特約が入っているのですが、いちおう一週間の期限付きで賃料支払いを催告し、支払わなければ契約を解除する旨の通知をしました。ところが、借家人は可敷金が半年分も入っているのだからそれを充当してほしい。敷金がなくなるまでに金は何とかする」というのです。このような要求を甘受しなければならないのでしょうか。敷金は借家人の賃料不払いや債務不履行等に対する損害賠償の不払いに備え、それを担保するために契約締結時に家主が借家人から預かり、契約が存続する問ずっと預かっておく金員です。すなわち、何らかの事情で契約が終了した場合に(あるいは契約存続中でも)、借家人に賃料不払いや賃貸物棄損による損害賠償等の未払いがあれば、家主は預かってある敷金から不払い金員を徴収することができます。借家人が敷金を返還するよう家主に請求できるのは、賃貸借契約終了後、少なくとも建物明渡しと引換えであって(通常は明渡しから一定期間経過後と定められていることが多い)、それ以前には借家人のほうから敷金返還を請求することも、それを不払い債務に充当するよう家主に請求することもできません。そうでなければ敷金の担保機能は失われるか、著しく弱められてしまいます。借家人の都合で敷金を不払い賃料に充当することができるのであれば、敷金はたちまち底をつき、以後の不払い賃料や損害賠償債務を家主のために担保するものは何もなくなってしまうからです。したがって、質問の家主は賃借人の要求に応ずる必要はなく、たとえ不払い賃料額以上の敷金を預かっていても、敷金はそのままにして賃料不払いを理由に契約を解除することができます。契約には無催告解除の特約が入っている上、いちおう催告もしているわけですから、一週間の期限経過後はこれ以上待つことなく契約を解除してかまいません。

このページの先頭へ