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借地権と特別の経済的利益

2020年1月9日「木曜日」更新の日記

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借地権の設定にあたって権利金を収受せずに、保証金を収受したり、低利の貸付金を受けた場合。借地権を設定して権利金を収受すると、一般的には譲渡所得になり、額によっては不動産所得になる。いずれにしても、その税額は相当のものになる。権利金を収受しなくて、同じような効果をあげ、しかも課税対象とならない方法はないかと、誰しも考えることである。たとえば、鉄筋コンクリート造の建物の所有を目的とする期間60年の借地契約をして、権利金相当額を保証金として収受する。保証金には利息をつけず、借地期間の満了する60年後に返還する。権利金はもらったものであるから、課税対象となる。しかし、保証金は、単に預かったものであり、60年後には返還する。だから、課税の対象にならないはずだという理屈である。この理屈は、もっともな点もあり、昔はこの方法でやって課税を免れた例もある。しかし、借地権を設定するとき、皆がこの方法を使うと、借地権の設定についての課税はなくなってしまう。それで、所得税法で新たな規定をもうけて、こういう場合には課税することとした(所令80条)。だから現在では、課税されることになっている。金を借りた場合、通常は利息を取られる。無利息で金を借りれば、毎年の利息相当分だけ借りた人がトクをする。このトクを「特別の経済的利益」とよんでいる。市中の借入利子の水準が年3.5パーセントだとする。そこで、時価1億円、借地権価額8,000万円の土地を期間60年で借地させて、無利息で期限60年の借入金の8,000万円を受け入れたとする。この8,000万円のうち、1,016万円を年利3.5パーセントの複利で運用するとすると、60年後には、約8,000万円となっている。そうすると、その差額の7,000万円は消費してしまっていいことになる。すなわち、7,000万円の権利金をもらったのと同じような効果がえられる。その経済的利益が更地価格の一を超える場合には、その経済的利益を譲渡収入として、譲渡所得の計算をするようになっている(所令80条)。特別の経済的利益(権利金も受け取っているときは、権利金との合計額)が更地価格の一を超えない場合は、譲渡所得に該当しない。権利金を受け取って、その金額が更地価格の一以下のときは、その権利金は不動産所得に加算されるが、このようにして計算した特別の経済的利益が更地価格の一以下である場合の保証金の税務はどうなるのかというと、かなり複雑な問題となる。定期借地権の設定に際して受領した敷金、保証金についてその取扱いでは、敷金、保証金を銀行預金等として運用している部分を除いては、その額の大小に関係なく、認定利息相当分を不動産所得の収入に計上するとともに、事業などで運用した場合には、これと同額を必要経費に算入するとしている。

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